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ハイレゾを良い音と感じる謎を解明するハイパーソニック・エフェクトとは?

高音質メディアとして定着した感のある『ハイレゾ(ハイレゾリューション音源)』ですが、その音がなぜ高音質に聴こえるのかについてはまだまだ謎も多く、正否にかかわらず様々な意見が存在します。今回はその謎の一端を解き明かした『ハイパーソニック・エフェクト』研究が提唱する、ハイレゾの新たな魅力と可能性を紹介したいと思います。

ハイパーソニック・エフェクトの発見

みなさんはこんな疑問を持ったことはないでしょうか?

「人間は20kHz以上の音が聴こえないのだから、ハイレゾは必要ないのでは?」

人間の可聴帯域は20kHz程度と言われ、これを根拠にCDのサンプリング周波数は44.1kHzと決められました。さらに年齢と共に聴こえる高域の周波数は低くなっていきます。それならば、CDを超える再生周波数帯域を持つハイレゾは必要ないと思うのも無理はありません。

この考え方の根拠になっているのは、国際無線通信諮問委員会(CCIR)が勧告した実験方法によって得られた評価に基づく「15kHz以上の高周波はあっても無くても影響しない」という世界の音響学会の定説です。その実験方法とは、著名な音楽家やレコーディング・エンジニアを被験者に、超高周波の収録された音と収録されてない音を0.5秒ないし1秒程度のわずかな間隔で切り替えて聴いてもらい、音に違いがあるかを答えさせるというものでした。

この定説に対し、超高周波の効果を実感しているレコーディング・エンジニア達は疑問を持ちます。その中に音楽家・山城祥二として知られる科学者・大橋 力氏がいました。

大橋力

山城祥二氏はアーティスト・グループ『芸能山城組』を主宰し、ビクターから12枚のLP/CDを出すとともに劇場アニメ『AKIRA』の作曲・指揮・音楽監督としても有名です。

芸能山城組

山城祥二(大橋 力)氏が疑問を持つきっかけになったのは、スタジオワークでの奇妙な現象でした。それは、LP全盛期に<隠し味>として使っていた「50kHz以上の超高周波を電子的に強調すると、音の味わいが歴然と深まって感動的になる」というものです。しかしこの<隠し味>は、22kHz以上の周波数を記録できないCDでは効果が無く、音質も感動も格が落ちてしまう事実に山城祥二氏らは衝撃を受けます。

この体験をもとに、山城祥二(大橋 力)氏は今までの実験のやり方に問題があるのではないかと考え、過去の研究方法の全面的な見直しに着手します。

まず従来の主観的な音質評価=「心に聞く」ではなく、超高周波の影響を脳の反応として捉える「脳に聞く」方法を導入します。つまり、音の違いが分かったか聴こえたかという判定ではなく、音を聴いたときの脳波と脳血流の変化を組み合わせて計測するというやり方に切り替えたのです。

山城祥二(大橋 力)氏らはこの方法を使って各研究機関と共同で研究を進め、超高周波を含む音を聴いたときに脳が活性化することを実証します。その結果は、超高周波の必要性を証明するにとどまらず、「こころ」と「からだ」の健康にも影響を及ぼすという驚くべきものでした。

それによれば、 超高周波を含む可聴音(ハイパーソニック・サウンド)により脳が活性化することで、「免疫活性の改善」「ストレスホルモンの減少」「認知機能の向上」等とともに、音をより美しく感じる「心理反応」が引き起こされるというのです。そしてこれら一連の精神と肉体に広がるポジティブな現象を『ハイパーソニック・エフェクト』と名付けました。

今までハイレゾなどの超高周波を含む音は、耳で聴くことで良い音に感じると思われていたのですが、脳が活性化することで良い音に聴こえるというのは逆転の発想に近い画期的な発見です。面白いのは、ハイパーソニック・エフェクトは聴覚以外の感覚入力に対しても美・快・感動の反応を増し(クロスモーダル効果)、同じ映像がより美しく見えるという現象が起きることです。

またこの研究では、ハイパーソニック・エフェクトを発現させる条件についても検証しています。

その結果、超高周波だけではハイパーソニック・エフェクトは発現せず、『可聴音』+『超高周波』を聴くことが必要で、『可聴音』は耳だけで聴いても良いが『超高周波』は体表面に直接到達しなければならないということが分かってきました。つまり、超高周波は耳ではなく体の表面で受容していると言えます。

また、どのような超高周波でも良いというのではなく、電子的に合成した『ランダムノイズ』や『正弦波』では効果が認められず、複雑なゆらぎ構造を持った超高周波を含む自然性の高い音のみハイパーソニック・エフェクトを発現させます。

これが可聴帯域外の超高周波を含むハイレゾがCD等よりも良い音に聴こえる秘密です。

ハイパーソニック・エフェクトが切り拓く未来

現在、ハイパーソニック・エフェクトの研究はオーディオ分野のみならず医療への応用にまで進んでいます。

現代人が抱える「うつ病」や「アルツハイマー病」さらには高血圧や糖尿病などさまざまな「生活習慣病」が環境変化に伴う基幹脳の機能低下に原因があるとし、ハイパーソニック・エフェクトの基幹脳の活性化効果を応用することで、薬などを使わずに現代病を治療するというのです。

ハイパーソニック・エフェクトを発現させる“ゆらぎ”を含む超高周波は、熱帯雨林の環境音やインドネシア・バリ島の打楽器オーケストラ・ガムランなどに多く含まれます。実は、オーケストラを始めとする西洋音楽や都会の環境音にはハイパーソニック・サウンドがほとんど含まれていないのです。

バリ島

100kHzに及ぶ超高周波を出せるチェンバロから進化したと言われるピアノの再生周波数上限は10kHz以下にとどまるように、楽器の進化(退化?)でも超高周波は失われ、オーディオのメインフォーマットもLPから超高周波がカットされたCDなどのデジタルオーディオに替わるなど、自然を離れた現代人はハイパーソニック・サウンドが乏しい環境で暮らしています。

そこでハイパーソニック・エフェクトの研究者は「人類の祖先は熱帯雨林で生活していたためその環境に適した遺伝子を構成していたが、文明化と共に超高周波のある環境を失っていき、環境との不適合によるストレスの増加がさまざまな現代病を引き起こしている」という仮説を立てます。

そして、その失われた超高周波をハイパーソニック・サウンドで補完することにより、基幹脳活性の慢性的な失調で引き起こされていた精神と肉体の問題を解決することが、現代病の治療に繋がることを実験で証明しつつあります。

自然の中で聴こえる「鳥や虫の鳴き声」「川のせせらぎ」「草木の葉擦れの音」に心が癒された経験は誰でもあると思いますが、そのメカニズムが科学的に解明されようとしているのかもしれません。

ハイパーソニック・エフェクトの発見から生まれたハイレゾ

最初のハイレゾであるDVD-AudioやSACDの誕生を後押ししたハイパーソニック・エフェクトの発見は、科学者・大橋 力氏が音楽家・山城祥二としての顔を持っていたからこそ成し遂げられたと言えます。レコーディングスタジオでの経験が無ければ従来の定説に疑問を抱くことは無く、音楽に感動する人間でなければ何を実証すべきかも分からなかったでしょう。

そんな山城祥二(大橋 力)氏の集大成がBlu-rayソフト『AKIRA』です。

このソフトが話題になったのは、アニメBlu-rayソフト初の192kHz/24bit(ドルビーTrue HD 5.1ch)収録だったことです。もちろんこれが偶然でないのは言うまでもありません。

当時は今まで経験したことのない高音質に驚きましたが、その秘密がインドネシア・バリ島の男声合唱『ケチャ』を使った音楽と100kHzに迫る超高周波を収録したハイパーソニック・サウンドにあったのだと今では理解できます。

そして今、Blu-rayとともに音楽配信という方法で我々はハイレゾを聴くことができます。CDの普及により失われたハイパーソニック・サウンドを再び手に入れることが可能になったのです。

もう高音が聴こえないと自分の年齢を悲観せずに、健康のためにどんどんハイレゾを聴こうではありませんか!?

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